弁護士がまとめた「相続人」のQ&Aです。遺産分割の無料相談についても案内中です。
Q 相続人ってどのような人をいいますか?
たとえば、被相続人の子供、直系尊属(父母、祖父母)、兄弟姉妹、及び配偶者(妻、夫)等と定められています。
なお、直系尊属とは、父母、祖父母などのように、血筋が直接につながっている親族のうち、被相続人より先世代の親族をいいます。
Q 相続人となるのに必要な資格はありますか?
また、民法上、相続人となっていても、以下の場合には財産を相続することはできません。
①相続開始の時に死亡している
②相続人としての資格を失う事由がある
③家庭裁判所から相続権を剥奪されている
なお、「胎児」(たいじ)に関しては特別な規定があります。胎児は、解釈上、人となる前の段階として「人」とはされていません。しかし、民法上、胎児についても相続権を認めています。
たとえば、妻が妊娠中に、夫が亡くなった場合を見てみます。特別の規定により、夫の財産は、奥さんと妊娠中の子どもに相続されるということになります。
仮に、胎児の規定がなければ、夫の財産は、奥さんと夫の両親に相続されてしまい、将来生まれる子供のために財産が行かなくなります。
Q 相続人はどうやって決まりますか?
まずは、被相続人に配偶者がいれば、配偶者は、常に相続人となります。
また、民法は配偶者以外にも相続人を定めていますが、誰が相続人となるかは、子供がいるか等によって異なってきます。
被相続人に子供がいる場合には、子供も相続人となり、相続人は子供と配偶者だけになります。この場合、被相続人の両親、兄弟姉妹などは相続人となりません(民法889条1項)。
被相続人に子供がいない場合は、被相続人の直系尊属が相続人となり、相続人は配偶者と直系尊属だけになります(民法889条1項1号)。
直系尊属がいない場合に初めて、被相続人の兄弟姉妹も相続人となります。
Q 相続人が既に亡くなっていた場合、財産は誰に受け継がれるのですか?
例えば、被相続人が死亡する前に、すでに長男が死亡していて、その長男の子(被相続人の孫)が存在するとした場合、その孫が亡くなった長男の代わりに相続分を相続することになります。孫が亡くなっていて曾孫(ひまご)がいれば、曾孫が相続することになります。
Q 相続させたくない相続人がいる場合、相続人から外すことはできますか?
まず、遺言によって法定相続分を変えることは可能です。たとえば、3人のご子息がいる場合、遺言によって、長男以外の次男、三男に全財産を相続させれば、長男を相続人から外すことができます。
ただし、遺言によっても、遺留分(いりゅうぶん)を無くすことは原則としてできません。そこで、遺留分も渡したくない場合には、相続人の廃除という手続を利用することが可能です。
相続人の廃除ですが、被相続人に対し、虐待、重大な侮辱を加える、又は、その者にその他の著しい飛行があったときに認められます(民法892条)。
被相続人が、生前または遺言で、相続させたくない相続人から相続権を奪うよう家庭裁判所に請求し、その請求が認められれば外すことができます。これを、民法上、相続人の廃除といいます。
相続人の廃除は、相続人となる者に相続人としての資格を奪うほどの非行・不正がなくても可能ですが、簡単に認められる訳ではありません。
また、被相続人が、遺言で廃除の意思を表示していたときは、あらかじめ決められた者が被相続人に代わり、廃除の請求を行うことになります。
なお、廃除の取消しは、いつでも家庭裁判所に請求できます。
Q 相続人の不存在制度とは?相続人がいない場合はどうなりますか?
主として、利用されるのは、特別縁故者が、相続財産を受け継ぐケースです。
たとえば、被相続人の生前中に、親身になって病養看護、財産の管理に尽くしたりした方がいたとしますが、他に相続人がいない場合、その相続財産をその特別縁故者に受け継がせた方が良いでしょう。
特別縁故者は、この相続人の不存在の制度により、適法に、現金などの財産を得ることができ、また、不動産の登記、預貯金の名義をご自身に移すことができるようになります。
手続の説明ですが、相続人がいない場合、請求により、相続財産を管理する相続財産管理人がおかれます。管理者が付くことにより、相続財産を保全することが可能となります。
次に、相続人の捜索を公に知らせ(6ヶ月以上)、それでも相続人である者が現れない時に、相続人不存在が確定します。
相続人がいないことが確定すると、死者と特別な縁故があった者への相続財産の分与がなされ、残りの分は国に帰属させることになります。